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スコラ哲学者ベストナイン




 「スコラ哲学」とは何か、といいますと、ヨーロッパで11世紀〜15世紀に盛んだった、「キリスト教で言われている“奇蹟”なんかのたぐいを、科学・哲学でなんとかこじつけて説明してしまおう!」というものです(スコラ哲学者の皆さんごめんなさい)。

 なんか錬金術っぽい気もしますが、それはそれとして多くの高名なスコラ哲学者が輩出しました。その中から私が選んだベストナインのオーダー。


 1 カンタベリーのアンセルムス
 2 ドゥンス・スコトゥス“精密博士”
 3 聖アウグスティヌス
 4 聖トマス・アクィナス“天使的博士”
 5 アウィケンナ(イブン・シーナ)
 6 聖アルベルトゥス・マグヌス“全科博士”
 7 アウェロエス(イブン・ルシュド)“注釈者”
 8 アベラール
 9 オッカムのウィリアム“不敗博士”




 それぞれの人の細かい思想は、(中世)哲学史の本を読んで貰った方がいいとしまして……。

 なぜこういうオーダーになるかという話を。

 1番バッターのアンセルムス(1033?〜1109)は、「最初の代表的スコラ哲学者」だから1番に置いてあります(^^) ホントはその前にスコトゥス・エリウゲナなんてのもいましたが、影響力などの点でアンセルムスの方が遙かに上だし、スコトゥスは後で異端と見なされちゃったし。アンセルムスで有名なのは、その「神の存在論的証明」ですね。「神は完全なものであると考えられる。完全なものが存在しないとは考えられない。ゆえに、神は存在するはずである。」という様な考え方ですが、いろいろ批判されてますね(^^;


 2番バッターのドゥンス・スコトゥス(1266頃〜1308)は、その称号“精密博士(或いは「鋭利なる教師」)”が示すように、もうとにかくなんでもかんでも細かく分析してやり玉に挙げていく、という事を得意とした人です。論争相手として一番イヤなタイプですね(^^; ゆえに、2番バッターで、また、キャッチャーもやらせる。これは相手がまいるぞ(^^)V


 3番バッターの聖アウグスティヌス(354〜430)は、ホントはスコラ哲学者じゃなくてその前段階の教父哲学者ですが、まあええということで。その影響力は甚大で、この人がいなければスコラ哲学もなかったと言えます。しかし、32歳の時まで女性関係のだらしのない遊び人で、敬虔なキリスト教徒の母親によって女性と引き離されると悶々とした日々を送る。改心してからは野球?に専念するんですが、いちいちヒットを打つ度に涙を流して神に感謝したり、凡打すればしたで「神よ、なぜ今が私の恥辱の終わりの時にならないのですか」と言って泣くし、スキャンダルを起こした時にはマスコミに数千ページにものぼる反論書を用意したりと、ちょっと尋常でないお人柄(^^;


 4番バッターの聖トマス・アクィナス(1225〜74)は、「スコラ哲学の王」とも呼ばれる偉大なバッター。アウグスティヌスと違って若い頃からとにかく野球ひとすじで、彼に野球を断念させようとした親が若い女性と一緒に一室に閉じこめたが、全く手を出さずに野球理論の研究に打ち込んでいたらしい。極めて著作が多く、私の先輩はトマス・アクィナス専攻を、「一生かかっても読めないから」諦めた程(^^; その信仰と理性を壮大な体系にまとめ上げた野球?理論は高く評価されている。もの凄く太ってて、彼の机にはお腹が入る様に切り欠きが作ってあったらしい(^^;


 5番バッターのアウィケンナ(ラテン語名)は、本名(アラビア名)イブン・シーナ(980〜1037)。外国人選手。東方におけるイスラム教哲学の完成者と言われ、百科の学に通じ、往年の名バッターアリストテレスの野球?哲学をアラビア経由でもたらした。医学の権威でもあり、チーム内でのトレーニング指導やカウンセリングも担当する重鎮。


 6番バッターの聖アルベルトゥス・マグヌス(1200頃〜80)は、「偉大なアルベルトゥス」と言われる、トマス・アクィナスのお師匠サマ。その博識ぶりは恐ろしいほどで、「全科博士(万有に通ずる博士)」と呼ばれた。注意深い観察が得意で、相手ピッチャーの傾向を読んで、その証拠(^^;に基づいて打撃理論を組み立てる。しかし革新性に関しては弟子のトマス・アクィナスに及ばず、権威は高かったが、打撃成績ではやや落ちた。


 7番バッターのアウェロエス(ラテン語名)は、本名(アラビア名)イブン・ルシュド(1126〜98)。アウィケンナと並ぶ外国人選手。のちに現役選手を引退して解説者となった時に、「簡単な解説」「やや詳しい解説」「詳細な解説」の三段構えの解説を毎回、たどたどしい言葉でしていたため、皮肉と賞賛を込めて“注釈者”と呼ばれることになる(^^; 現役選手としては、野球理論と(長嶋的)動物的勘の乖離に悩み、「理論も勘もどちらも正しいのだ」という二重真理説をとったためフォームがばらばらになってあまり活躍できなかった。


 8番バッターのアベラール(ラテン語名アベラルドゥス:1079〜1142頃)は、「常勝の弁証法の騎士」としてつとに有名で、「自分に勝てる者はいない。自分以外に哲学者はいない。」とまで思っていたらしい。ところが、家庭教師を任されたエロイーズという女性と恋に落ち、駆け落ちして、怒ったエロイーズの父親に、去勢されてしまった。そういうわけで、今は情けない8番バッターなどをしている(^^;


 9番バッターにしてピッチャーは、オッカムのウィリアム(1285頃〜1349頃)。彼の「必要なしに実在を増やしてはならない」という理論は「オッカムのかみそり」と言われ、そのかみそりシュートは、バットをも軽く切断するという(^^; とすれば、バッターがボールを打てるわけもなく(^^;、「不敗の学識者」「祝福された学位取得者」などと呼ばれる。ただし、トマス・アクィナスや、キャッチャーのドゥンス・スコトゥスととんでもなく仲が悪く、マウンド上でキャッチャーと殴り合いの喧嘩をして退場させられてほとんど出番がない(おい)。