佐々木賢(ささき けん)


 この人は高校教師(夜間?)で、子どもとじっくり付き合ってきた方らしいです。あんまりどういう人か良くはわからないのですが、この人の論が新聞に載っていたのを見て、私は大きな衝撃を受けました。

 その論は(たしか)「教育問題の深刻化は世界全体で起こっているのであって、日本の教育のやり方が問題を引き起こしているのではない。全世界的な社会的なことが原因で教育問題が起こっているのだ。人々は教育問題を教育によって解決しようとしているが、それは教育への過信から出てくる過誤に他ならなず、教育以外の道によって教育問題を解決することが図られるべきである」というような内容で、私は「うおお、なるほど!」と思ったわけです。

 この人の『親と教師が少し楽になる本』には、佐々木賢が送る言葉群というのがあるので、そこから抜き書きしましょう(手抜きです。スイマセン)。

■教育化したから、若者たちが大切な目標に到達できないでいるのだ。
■学力低下の原因を教育制度の内側に求める限り出口が見えないのだ。
■教育関係者や大学教授やマスコミが学力低下の原因をつかみ損ねているのは、教育問題を教育で解決できると思っているからだ。
■若者たちの憂鬱は出番の喪失にある。若者の出番を作ること、それは現実の社会で困っていることの解決を若者たちに頼むことだ。

 章立ての中には「教育ってそんなにいいものか」「蒸発する教育」などというものもあり、すでに学校という枠組みは現在の社会に適合しなくなっている、という事が示されます(と思います)。

 そういうわけで、親と教師がいくら教育問題でがんばってもムダだよ、という事が『親と教師が少し楽になる本』で語られ、「だから楽になるでしょ?」と言いたいのかもしれませんが、私はむしろ「余計にしんどくなる」のではないかと思いましたが、どうなんでしょう?(^_^;

 この人は教育論者の中ではたぶんあんまり有名でない人だと思います。著作はいくらかありますが、私が持っているのは2冊で、『親と教師が少し楽になる本』は、親と教師向けとはいいますが、若干難しい(本に弱い人なら全然読めないでしょう)。もう一冊の『教育という謎』なんかは、超絶難解で、私も「なにゆーとるのかわかりませんわ〜」とヘロヘロになりつつ、ところどころ自分が分かるところだけ印を付けた、という感じです。ただ、前者の本については、教育問題に興味があるのならば、読むべき価値があるだろうと思います。

 著作リスト:
『親と教師が少し楽になる本』(北斗出版 佐々木賢)
『教育という謎 −消費社会の文化変容−』(北斗出版 佐々木賢 松田博公)